出張授業と寺子屋の学び(7月20日)

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例年は、今頃が梅雨明けですが、今年は、例年より三週間ほど早く6月27日に梅雨が開けました。

さて、一か月ほど前のことですが、今年度の東陶器小学校の出張授業に行って参りました。
毎年、小学3年生の総合(総合的な学習の時間)の授業において、月輪寺がテーマに取り上げられます。

総合の授業とは、既存の科目の枠にとらわれずに、子どもたちの探究学習に主眼が置かれた授業です。

一学期に出張授業を受けた後、班に分かれ、半年かけて、月輪寺について学びます。

最初の授業では、子どもたちが親しみが沸くように、
①月輪寺の境内で、明治5年に東陶器小学校(西陶器小学校)の前身である第三区郷学校が開校したこと
②江戸時代に寺子屋があったこと
③月輪寺は、行基菩薩にゆかりのあるお寺であること
などを中心にお話します。

短い時間なので、あまり深くは話せませんが、地域のお寺で江戸時代から子どもたちが学んでいて、それが今の小学校にも繋がっていることや、何気なく過ごす地元に深い歴史があることを知ってほしいと思って、授業をしています。

話を聞くだけではつまらないので、動画を用いたバーチャル参拝や古い写真も活用します。
今回は、上記の②については、子どもたちに『江戸時代の算数の問題』を出してみました。

江戸時代の寺子屋の和算の教科書には、算数の問題が数多く記載されています。

皆さんも、江戸時代の子どもたちが解いていた算数の問題にチャレンジしてみてください。

【問1(俵の数を数える問題)】
米俵(お米の袋)が一番上が1俵、その下が2俵…、と1段ごとに1俵増える形で積まれています。
一番下が13俵であるとき、米俵は全部でいくつあるでしょうか?
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【解答】
単純に、1+2+3+…+13と計算してもよいですが、江戸時代の和算の教科書には、計算の工夫が次のように記されています。
俵杉算
上下逆になった米俵の山を追加して考えましょう。
1番下の段に1俵追加、2段目には2俵追加…、最上段に13俵追加すると、全ての段が14俵になります。
全部で13段なので、
14(俵)×13(段)=182(俵)
二つに分けて、求める俵の数は、91俵

このように、江戸時代の教科書でも、等差数列の和の求め方が視覚的に図を用いて解説していることが分かります。

【問2(絹盗人算)】
絹の反物を盗んできた盗人が、橋の下で、何反ずつ分けるか話し合っています。
盗人が何人いるか分かりません。
次のような会話だけが聞こえてきました。
「8反ずつ分けると、7反足りないなぁ。」
「7反ずつ分けると、8反余るなぁ。」
盗人は何人で、盗んだ反物は何反でしょう。
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【解答】
盗人一人当たり1反ずつ増やしたことによって、「8反の余り」から「7反の不足」まで新たに15反必要になる。
このことから、盗人たちの数は15人
盗んだ絹の反物は、7反×15人+8反で、全体で113反

これは、絹を盗んだ人たちの会話から、盗人の数などを当てる問題です。
現代では、連立方程式を用いて計算しますが、和算の世界では、分け前を一反増やした際の違いから計算している点が特徴的です。

さて、皆さん、どうだったでしょうか。
意外と難しく感じられたと思います。

実は、これらの問題は、基礎問題で、この後に発展問題が続きます。
例えば、俵の数を数える問題では、米蔵の大きさから、その中に入る俵の数を計算する問題など、より実用的な内容に変わっていきます。
また、面積の問題では、屋根のサイズから用いる瓦の数を計算する問題などもあります。

江戸時代の寺子屋の学びは、和算を用いて、生きていくために必要な実学的な算数を学んでいたことが分かります。

住職 樫本叡学