蝉考(7月16日)

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セミが境内でも鳴き始めました。
8月に入ると、耳が痛くなるほど、クマゼミが鳴き始めます。
セミを見ると、子どものころ、竿竹の先に虫網をつけて、いろいろなセミを捕まえたことを思い出します。

20年ほど前には、クマゼミだけでなく、ニイニイゼミ、ツクツクボウシ、ミンミンゼミ、アブラゼミなど、多くの種類のセミが見られましたが、最近では、クマゼミとアブラゼミくらいしか見かけなくなりました。

調べてみると、都市部では、アブラゼミでさえも激減しているようです。

その原因の一つが、『セミの逃げ方』と『緑地帯の減少』にあるとされています(※)

セミは、種類によって、天敵に襲われた時の逃げ方が異なります。
クマゼミは、その高い飛行能力を生かして、遠くに逃げることができます。
アブラゼミは、その体の色を生かして、逃げても近くの木にすぐに止まり、木と同化しようとします。

都市部では、緑地帯が小さく、木々も少なくなってきているので、飛ぶ力に長けたクマゼミにとっては、障害物がないため、遠くまで逃げやすい状況になっています。
一方、アブラゼミは、なかなか隠れる木が見つけづらい状況になっていて、一度、天敵に見つかると、逃げ切れずに食べられてしまうことが増えている、というのです。

つまり、緑が少なくなっている都市では、クマゼミは飛行能力を発揮しやすいけれど、アブラゼミはその擬態能力を発揮しにくい状況になっている、ということです。

セミについて調べていると、人間社会にも通じるところがあって、考えさせられてしまいました。

写真は、境内でたまたま見つけたアブラゼミです。

セミにとっても、人にとっても、いつまでも、さまざま能力が生かせる社会であってほしいものです。

 

副住職 樫本叡学

 

※ 高倉幸一氏、山崎一夫氏の研究(当時の所属:大阪市立環境科学研究所)