「どうして紅葉するの?」(11月11日)

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所用で高野山に行って参りました。

今週末(12日,13日)や週明けが見頃でしょうか。

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個人的には、伽藍にある勧学院の裏側の駐車場のモミジが、例年鮮やかな赤に染まるので気に入っています。

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さて、今回は、紅葉に関して少し書いてみたいと思います。
小さな子どもから、「どうして紅葉するの?」と聞かれたら、皆さんなら、どのようにお答えになりますか?
私も、3歳になる長男から、少し前に質問されて、「寒くなって、お日さんに当たると、赤くなるんだよ。」と(理由も詳しく分からないままに)答えました。

すると、「りんごと一緒だね。」と子どもが返してきました。

子どもの無邪気な言葉は、深いところをついているようにいつも感じます。
調べてみると、紅葉もリンゴも、クロロフィルという緑色の色素が酵素によって分解されて、無くなってしまう一方で、黄色(カルテノイド)や赤色(アントシアニン)は分解されないため、赤や黄に色づくらしいです。

確かに、子どもが言うように、紅葉もリンゴも色づくメカニズムは一緒でした。

 

ただ、もっと調べてみると、自然ってすごいと感心することが多々ありました。
いくつか列挙します。

  • 緑色の色素を無くすことが身を守ることに繋がる。
    秋になると、光合成をして養分を生み出す力が衰える。それなのに、光に当たると、光のほうが強すぎて、緑色(クロロフィル)が体を傷つける活性酸素を生み出してしまう。そのため、緑色の色素(クロロフィル)が分解され、体を傷つけないようにする。

 

  • 赤色の色素は光合成を長く続けるためのもの。
    赤色(アントシアニン)は、光合成をする部分(葉緑体)に届く光の量を和らげるために、作り出される。
    ただ、遺伝子的に赤色になるものが決まっているだけでなく、気温、日照、水量などの条件が整わないと、赤色が作り出されない。

 

  • 落ち葉を餌にする微生物には、有害にもなりうる緑色(クロロフィル)を分解するメカニズムがある。
    もし緑色のまま葉が落ち、それを水中に住む体が透明な微生物が食べた場合、光が当たることで微生物の体内で活性酸素が発生し、有害になることも考えられる。
    落ち葉を餌にする微生物が、どうしてクロロフィルを無毒化するのかは、半世紀謎のままであったが、2012年に日本の研究チームがそのメカニズム解明した。

 

以前、境内の川に落ちた葉が、カワニナによって分解されて、葉脈だけになることを書きました。(→その日記はこちら

知れば知るほど、人が自然を見て美しいと思う背景には、パズルのように複雑に合わさったメカニズムがあるように感じます。

日頃、紅葉を見ても美しい、葉脈になった落ち葉を見ても美しいと感じるだけですが、その美しい理由を探り、自然の偉大さに触れることは、お釈迦さん以降なされてきた仏教的な思索に近い部分があるように感じます。

そのことに関しては、改めて、このブログ等で書きたいと思います。
週末は、暖かくなり、来週半ばは寒さが戻るようです。

くれぐれもご自愛ください。
副住職 樫本叡学

(注)日本植物生理学会のホームページに紅葉の仕組みについて分かりやすくまとめられています。