彼岸花の怖い言い伝え(9月24日)

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境内では、紅白の彼岸花が咲いています。

年々、その数は増えてきました。

お寺の裏手の田んぼの畔や土手でも、綺麗に咲いています。

彼岸花が咲く田園風景は、日本人の原風景とも言えるでしょう。

このような彼岸花ですが、好き嫌いが大きく分かれる花の一つだと思います。

他の花にはない立体的な作りが好きな方もいらっしゃるでしょうし、縁起が悪い花だと言って嫌う方もいらっしゃるでしょう。

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さて、今回は、彼岸花の「毒」と「怖い言い伝え」について少し書きたいと思います。

皆さんもご存知のように、彼岸花には毒があります。

リコリンと呼ばれる有毒成分で、水仙と同じ毒のようです。

花、葉、茎、球根のすべてに毒が含まれているようですが、中でもの球根(鱗茎)が最も毒を多く含みます。

人の場合は、体が大きいので、多量に食べない限り、死ぬことはないそうです。(水溶性の毒なので、飢饉のときに水にさらしてデンプンを取ったとも言われていますが、下痢や嘔吐、中枢神経の麻痺になる危険性があるので、食べないでください。)

でも、ネズミやモグラなど、体が小さな生き物の場合は、少しだけでも致死量になります。

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昔の人たちは、この彼岸花の毒を、上手に利用してきました。

例えば、モグラなどに作物を荒らされないように田畑の周りに彼岸花を植えました。
また、土葬のお墓を荒らされないように、お墓の周辺にも多く植えられました。

つまり、彼岸花の毒を用いて、大切に育てた作物や、大切なご先祖様のお墓を守ってきたわけです。

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でも、注意をしないといけないのは、こういった理由で彼岸花を活用していること自体、時が過ぎると忘れ去られる可能性があるということです。
特に幼い子どもは、そのようなことは全く知りません。
彼岸花が抜かれでもしたら、元も子もありません。

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ここで活きてくるのは、「彼岸花を触ると病気になる。」とか「彼岸花を切ると火事になる。」といった怖い言い伝えです。

「毒があるけど、食べ物などを守ってくれる大切な花だから触ったらダメだよ。」というより、「触ったら病気になるよ。」の方が、強烈に記憶に残って効果的なわけです。

彼岸花の怖い言い伝えは、地域によって異なります。

面白いもので、同じ地域でも様々あります。

私が子どもの時に聞いたことがあるものだけでも、先ほど挙げたものの他に「彼岸花を切ると死人が出る。」、「持ち帰ると母親が死ぬ。」、「摘むと手が腐る。」、「触るとやけどする。」など様々あります。

触るだけで病気や火傷になり、切るだけで火事になって、さらに手も腐り、持ち帰るだけで大切な人が亡くなるなんて、縁起が悪すぎですが、このような様々な怖い言い伝えがあるのは、それほど彼岸花が大切な花であった証とも言えます。

大切な花であると直接的に伝えるのではなく、記憶に残りやすい怖い言い伝えを語り継ぐことで大切な花を守ってきたわけです。

このように捉えると、今でも「縁起の悪い花」というイメージが定着しているのは、先人たちの思う壺なのかもしれません。

皆さんは、彼岸花にまつわる、どのような怖い言い伝えを覚えていますか?

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副住職 樫本叡学